24年ぶりに断熱の新基準が施行。施行された断熱等級について。

- コラム

住宅の品質確保の促進等に関する法律が一部改正され、2022年4月1日より「断熱等性能等級5」および「一次エネルギー消費量等級6」が施行。さらなる上位等級として、断熱等性能等級6、7が2022年10月1日より施行されました。

2022年3月31日までの最高等級である断熱等性能等級4は、平成28年(2016年)基準とされていますが、元となった基準は平成11年(1999年)の次世代省エネ基準であり、20年以上前の基準で技術の上がった現在では断熱性能が足りていませんでした。

ここ最近まで断熱等級4が最高等級だったため、「国が認めた断熱性能」など、大袈裟な表現の広告もよく目にし、十分な断熱性能と誤解されている方もいらっしゃったかと思います。

そこで新たに施行された基準がどの程度の性能なのかを解説させて頂き、家づくりを考えられる時の参考にして頂きたいと思います。

佐藤工務店の立ち位置としましては、断熱等級6までは建てており、それぞれの等級で冬の温湿度データを実測し、家づくりに活かしております。また、断熱等級7についても他社さんの情報を様々な媒体から得ているので、建てるための勘所は抑えていると考えています。

断熱等性能等級について

まず、前提知識として必要と思われることを説明させて頂きます。

日本は地域により気候条件が異なるので、北海道から沖縄までを8つ地域に分けて、断熱性能の基準を定めています。
上の表の横軸、地域区分と書いているところがその8つの地域にあたり、栗原市は4地域になっております。

また、縦軸は断熱の水準になっており、表の下にある断熱等級4に比べて、断熱等級7の方が断熱性能が良いことになります。
表中央の数字はUa値(外皮平均熱貫流率)と呼び、住宅の内部から床、外壁、屋根(天井)や開口部などを通過して外部へ逃げる熱量を外皮全体で平均した値です。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを示します

この辺りの解説は「佐藤工務店の家づくり」にある健康的に暮らせる暖かい家というところをご覧いただけると、より理解がしやすいかと思います。

断熱等性能等級5について

2022年4月1日に施行された断熱等級5のUa値は0.6(4地域)となっており、もともとはゼロエネルギー住宅(ZEH)の補助金を貰う際に設けられた基準という印象です。

現在では、断熱等級5の性能はそれほど高くないという印象で、断熱を意識せずに断熱材やサッシを選択してもUa値0.6付近の性能にはなると思います。

数年前に断熱等級5のお宅で、2月頃に温湿度を測定させて頂いた結果、外気温が氷点下になると洗面室(非暖房室)は10℃を下回ることもありました。
暖房用のエアコンを備えているリビングは、エアコンを付けると20~23℃を保っており、エアコンを消したと思われる深夜帯は12~13℃くらいまで室温が低下しております。

おそらく、Ua値0.6付近の性能で吹抜けやリビング階段を行なうと暖房費が掛かるか、寒いと感じると思うので、建具で仕切って各部屋各部屋を暖房していく形になると思います。

断熱等性能等級6について

2022年10月1日に施行された断熱等級6のUa値は0.34(4地域)となっており、HEAT20 G2がもとになっております。
HEAT20は居住者(生活者)の健康維持と快適性向上を目的とした基準となっており、G1、G2、G3と数字が増えるごとに断熱性能も良くなっていきます。

佐藤工務店が新築をする際に目標としているのも断熱等級6となります。
理由としては標準仕様としているスーパーウォール工法と樹脂サッシで、だいたい断熱等級6くらいになるので、大きくコストを掛けなくてもUa値を計算しながら、仕様を見直すと達成できる性能だというのが大きいです。

温湿度に関しましては、12月に測定させて頂きました。エアコンで暖房しているのですが、断熱等級5より安定しており、リビングは22~23℃を保っていました。
洗面室も戸を開けておくと、リビングの暖房がほんのり届くようになっており、だいたい18℃以上になっていました。深夜帯に暖房を消すと15℃まで下がっていることもありましたが、だいたいは17℃くらいで下げ止まるようです。

断熱等級5と断熱等級6の測定した室温を比較しますと、断熱等級が上がると、暖房を掛けた時の室温が安定し、非暖房室の最低室温が上昇するようです。

断熱等級6くらいになると、吹抜けやリビング階段にしてもそんなに気にならなくなってくるかと思います。

断熱等性能等級7について

2022年10月1日に施行された断熱等級7のUa値は0.23(4地域)となっており、HEAT20 G3がもとになっております。

断熱等級6までは部分的に断熱性能を高めていっても達成できる値なのですが、断熱等級7は全体的に断熱性能を高めないと達成できない値となっています。(下記の図のように断熱材の外に断熱材を取り付ける付加断熱が必要になります。)

全体的に断熱性能を高めるので断熱等級6までと比べて、コストアップの幅も大きくなりますが、冷暖房費の削減冷暖房機器の個数を減らすことができ、冷暖房機器の更新時にも価格を抑えることができます。また、健康改善などを考えると、断熱等級7にするメリットは十分にあると考えています。

断熱等級6・7が施行され、今後、断熱資材の価格が下がれば、断熱等級6と断熱等級7の差が縮まってくると考えられます。数年後、十数年後に断熱等級7が普通になる可能性も考えられるので、断熱等級7を建築が可能なご予算なら検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

住宅の目的は、そこに暮らす方が幸せに過ごすことなので、断熱は一つの要素にしかすぎません。
とはいえ、断熱性能を高めると、光熱費の削減、ヒートショックのリスクを減らしたり、健康を改善する効果もあると言われており、幸せに暮らしていくためには断熱性能は高いに越したことはないと思います。

今後、佐藤工務店でも断熱等級7に取り組んでいきたいと考えており、そのためには、技術的なことを学ぶことはもちろんですが、建築価格が上がるため、資金計画も丁寧に行なっていきたいと考えております。
丁寧な資金計画の一つとして、お客様にも必要なお金の知識を学んで頂くために、毎月、資金計画セミナーを開催しております。
ご興味のある方は、資金計画セミナーのページからお申込みください。

 

また、当記事にはアップしておりませんが、温湿度データをまとめたグラフもございます。
アップしていない理由としましては、断熱性能の他に24時間換気や暖房機器、間取り、暮らし方などのさまざまな前提条件が温湿度に影響を与えるため、丁寧にお伝えしないと、勘違いをされるもとになると考えております。

今後、断熱性能の良い住宅で暮らしたい、参考にしたいという方は、温湿度データを実測してまとめたグラフをお見せしながら、家づくり相談会などでお話させて頂きますので、ご連絡ください。

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